【助産師執筆】帝王切開での出産で夫ができることとは?出産前、出産後も解説

最近では帝王切開が増えていますが、計画的な帝王切開であっても、また妊娠・分娩経過の途中で急に決まった場合にはとくに、帝王切開は心身ともに特別な準備や配慮が必要となります。また帝王切開だけではなく、産後には必ず周りのサポートが必要です。そしてママのそばにいるパパがその役割を担うことが多いでしょう。ママが安心して妊娠期間を過ごし出産・産後を迎えられるようにご夫婦で準備を整えておきましょう。この記事では現役助産師が、帝王切開での出産で夫ができることをお伝えしていきます。

ここでは帝王切開について夫が知っておくべきことについて解説します。

帝王切開の種類

帝王切開には種類があることをご存知でしょうか。帝王切開には2種類あり、1つは緊急帝王切開、もう1つは予定帝王切開です。
帝王切開の割合は4〜5人に一人です。そしてそのうちの約6割以上、つまり10人に一人以上のママが緊急での帝王切開を経験しています。

緊急帝王切開

緊急帝王切開とは、経腟分娩を予定していたけれど、妊娠経過中やお産の進行中に何らかの理由で経腟分娩が不可能と判断されて、急いでおこなう帝王切開のことをいいます。
緊急帝王切開をおこなう理由で多いものは、妊娠中や分娩進行中に赤ちゃんの元気がなくなること、それ以外には経腟分娩を目指して分娩が始まったものの、赤ちゃんが途中でうまく降りられない場合などです。
ママ側の理由としては、帝王切開を予定していたものの、手術予定日より前に陣痛が来る、前置胎盤から出血する、妊娠高血圧症候群の悪化などがあります。どの場合にも、急に手術が決まるために心身の準備を十分に整える時間の余裕がなく、手術後に「なぜ帝王切開になってしまったのだろう」と自身を責めてしまうママも少なくありません。

予定帝王切開

予定帝王切開とは、事前の検査などから経腟分娩に適さないと判断され、前もって計画しておこなう帝王切開のことをいいます。予定帝王切開の理由として多いものは、骨盤位(逆子)、多胎妊娠(双子さんや三つ子さん)、前置胎盤、前に帝王切開をしたことがある方、子宮の手術をしたことがある方などが対象となります。
前もって手術となることが決まっているので、ママや家族にとってさまざまな準備やスケジュールが立てやすいことがメリットではありますが、妊娠期間中ずっと帝王切開が不安に感じてしまうといったデメリットになる場合もあります。

帝王切開のリスク

帝王切開の手術には、経膣分娩のリスクと加えて以下のようなリスクがあります。

  • 感染症のリスク

手術中や手術後に傷から感染症が起こる可能性があります。そのため数日間の点滴や内服薬が必要となります。

  • 出血のリスク

手術中や手術後に出血が起こる可能性があります。そのため、数日間の点滴や内服薬が必要となります。

  • 麻酔関連の合併症のリスク

硬膜外・脊椎麻酔、場合によっては全身麻酔を使用するため、その合併症が起こる可能性があります。

  • 術後のキズ跡が瘢痕化するリスク

傷口が瘢痕化する可能性があります。産後にもケアが重要となります。

  • 術後の痛みや不快感

手術後の痛みや不快感が発生することがあります。傷口の違和感は年単位で継続するママも中にはいらっしゃいます。
さまざまなリスクがありながらも、赤ちゃんが元気に産まれることを優先し手術を選択されるママのことをしっかりとサポートしてあげましょう。

帝王切開のスケジュール

一般的な予定帝王切開の場合のスケジュールは以下のとおりです。

<手術前日>
入院、NST、術前オリエンテーション、夕飯以降絶食

<手術当日>
(手術前)
NST、絶飲食、点滴開始
(手術後)
病室に戻る、ベッド上安静、6時間程度で飲水再開、赤ちゃんと面会

<手術翌日から>
食事、離床開始、体調にあわせて赤ちゃんとの同室開始
※手術後5〜9日程度で退院の施設が多い

妊婦の気持ち

経膣分娩=自然な、正常な出産、というイメージを持っていることも多く、なぜ帝王切開になってしまったのか、とご自身を責めてしまう方も多くいます。また「手術が怖い」という気持ちを、「赤ちゃんのためなのだから、乗り越えられて当然」と我慢してしまう傾向もあります。特に緊急での帝王切開の場合には、ご自身の気持ちが整理されないままに出産が進んでいくことも少なくありません。

帝王切開は立ち合いができる?

「帝王切開の場合には、立ち会いができない」と思っている方が多いようですが、施設によって立ち会いが可能な場合もあります。立ち会いの人数や産婦との関係性、手術の時間帯などによって制限が設けられていることもあります。帝王切開での立ちあいやルールについては事前に確認しておきましょう。

帝王切開での出産前に夫ができること

次に帝王切開での出産前に夫ができることについて解説します。

立ち合いができる病院の調査

前述のとおり、帝王切開でも立ちあいが可能な産婦人科施設もあります。ご夫婦で話しあい、立ちあいを希望される場合には妊娠中の早い段階で、可能な施設を探しましょう。ただし、立ちあいが可能な施設は限られることを理解しておいてください。あくまでも母子の安全が最優先となります。

入院に必要なものを準備

入院時に必要となるものについて、ママだけではなくパパも一緒に準備できるようにしましょう。買い物の際には「どこに何が売っているのか」「価格帯はどの程度なのか」「何を基準として選ぶのか」など、商品ごとの考え方や選び方についても確認しておきましょう。
また、荷造りの際にもどんなものが必要なのか、それがなんのために必要となるのかを関心を持って準備することで、出産・産後や帝王切開のイメージが湧きやすくなるでしょう。もちろん、入院中のママから追加で必要な物の連絡があった際には、迷わず届けられるように把握しておきましょう。

説明を一緒に聞きに行く

ママの不安な気持ちに寄り添うためにも、そしてしっかりと医師や助産師などの専門家からの知識を得るためにも、手術に関する説明などを一緒に聞きに行くようにしましょう。仕事などの時間の調整は難しいこともあるかもしれませんが、一生に何度とない大切な期間です。ご夫婦2人で取り組むことを大切にしてください。医師や助産師からの説明の中でわかりづらいことは自分から積極的に質問し、参加することで、ママにとって一緒に赤ちゃんを迎える準備を整えていってくれている心強いパートナーであることを感じてもらえるでしょう。

バースプランを一緒に作る

バースプランは、どのようなお産を望んでいるか、出産後や入院中はどのように過ごしたいのかの希望をまとめたもののことをいいます。施設によって、専用の記入用紙がある場合もありますし、自分たちで用意する場合もあります。希望があっても、帝王切開では難しいと考え、帝王切開の場合にはバースプランを作らない方も中にはいますが、どんな出産や産後を迎えたいと考えているかの気持ちを整理するためにも、ぜひお2人で一緒に作ってみてください。希望した方法そのままの実践が難しくても、代替案を準備できることもありますので決して我慢せずにお話ししてみてくださいね。
またもし旦那様が出産準備に無関心な場合には、こちらの記事をご覧ください。

退院時の支払いを確認

帝王切開の場合の出産費用は、入院期間が長くなることもあり経膣分娩と比べて高額になります。また、高額な支払いとなることが予定されているのであれば限度額適用認定証の準備が必要となることもあります。既述のとおり、帝王切開は予定されているものばかりではなく、緊急でおこなわれる場合もあります。詳しい手続きの方法などについて、夫婦で確認しておくとよいでしょう。
さらにママの加入している医療保険によっては、保険金の支払いの対象となることもあります。手続きの方法や分娩施設に記入してもらう必要のある書類など、事前に把握してスムーズな手続きがおこなえるように準備しましょう。

出産費用や保険について詳しくは、こちらの記事もご参照ください。

帝王切開での出産当日に夫ができること

ここでは帝王切開での出産当日に夫ができることについて確認していきます。

出産当日は病院で待つ

出産当日、パパの立ち会いができない場合には特に手術中に何かできることがあるわけではありません。ですが、何かあったときのためや手術に向かうママを送り出し、出産後には出産を頑張ったママと赤ちゃんを迎えてあげるために、できれば出産当日は分娩施設で過ごせるようにしましょう。なかには産後、赤ちゃんの顔を見てすぐにお仕事に向かわれる旦那様もいます。もちろん、お仕事も大切ですが、出産当日の産前産後のパパの過ごし方は、妊娠中に十分に2人で話しあっておきましょう。

出産直後のサポート

記述のとおり、出産当日はベッド上で安静となります、手術後は熱が出たり、寒気があったり、吐き気があることも、また当然痛みがあることもあります。できる限りそばにいて差し上げて、ママが安心して休める環境づくりをしてあげましょう。

面会の調整

出産直後は、お祝いに駆けつけたい親族や友人もたくさんいらっしゃると思います。しかし、出産直後。特に手術直後のママにとって休息の時間は非常に重要であり、お見舞いの方々への対応は負担にもなりかねません。パパはママの体調や気持ちを確認し、ときにはお見舞いをお断りするなど積極的に親族や友人の間に立ち、ママの休息時間を確保するようにしてください。

退院した後に夫ができること

家事

帝王切開ではなくても産後のママには、最低でも2~3週間は家事をせずに、ご自身のこと・赤ちゃんのお世話に関することだけをおこなえる環境が必要です。できることならば仕事を調整し、家事をできるようにしましょう。また、それが難しい場合には産後の家事代行サービスや時短家電、ミールキットを使用できるように妊娠中から準備しておきましょう。

育児

帝王切開を経験したママは、手術後の痛みが原因となり、育児へのストレスを高く感じる方が経膣分娩後のママよりも多いという調査結果があります。帝王切開の痛みや違和感は、手術直後だけでなく年単位で続く方もいます。出産直後だけではなく、育児中、たとえば抱っこや授乳の際、おむつ交換のときにも、不調はないか痛みを感じることはないかなど、パパは気にかけてあげてください。

傷跡へのケア

傷口へのケアは最低でも1年間、丁寧におこなっていただくことで瘢痕化を予防できることがわかっています。テープの使用やスレの予防などで跡が残りづらくなるように配慮しましょう。
また傷についての話題を過度に避ける、積極的に言葉をかけることは、ママが負担に感じる場合と嬉しく感じる場合があります。妊娠中にゆとりがある間に、術後の傷などについてお互いがどのように感じているのか、どのような言葉かけや態度が好ましいのかを確認しておきましょう。
また、退院直後は腹筋を使う動作には痛みが生じます。そのため、起き上がり立ち上がりなど、動作の始めには痛みが生じることが多くなります。ママがベッドで過ごせるように赤ちゃんの寝るスペースの準備をすることも重要です。

まとめ

帝王切開での出産ではママへの負担が大きく、夫のサポートが大きな役割を果たします。パパには、一般的なサポートに加えてママ自身の不安や体調により関心を持っていただきたいものです。関心を寄せるためには妊娠中からご夫婦での話しあい、当事者意識を持って妊娠・出産について情報収集をする必要があります。急な帝王切開になっても「夫のサポートは問題ない!」とママが妊娠中から安心して過ごせるように、しっかりと準備しておきましょう。

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●執筆者紹介
山口百合乃
地域周産期センター、総合病院、個人クリニックと大小さまざまな病院で約2000件の分娩に立ち会い、約400件の分娩介助に携わる
現在はゆりの助産院を開業し、オンラインと訪問型の助産院の院長として活動中。「人とちがって当たり前!生きてりゃOK」のマインドで、正解を探しすぎず、楽しく妊娠・出産・育児ができるように地域や企業でママパパへ向けた活動を行っている。3児の母。

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