住んでいる場所や新築物件か中古物件かなどに関わらず、私たちの住宅にはダニやゴキブリなどさまざまな害虫が寄りつきます。そこで今回の記事では、新居に出やすい虫や掃除すべき場所、駆除のためのポイントについて解説します。引越前(入居前)にできる虫対策を確認し、大切なマイホームで安心して生活できるよう準備しましょう。
目次
新居に出やすい虫とは
新築住宅か中古住宅かを問わず、新居にはさまざまな虫が出やすいものです。その中でも代表的なものは、ゴキブリ・ダニ・タカラダニ・シロアリ・クモ・カツオブシムシ・イガ・ハエ・コバエなどが挙げられます。
健康で安全な生活を送るためにも、人体や建物に対して害を及ぼす虫を見過ごすことはできません。私たちがつくり出す環境が原因となって、虫が発生してしまうことも多々あります。虫が発生する原因や対策について主なものを解説していきます。
新居に虫が出る原因
新居に虫が出る主な原因としては「前の家から持ち込んでしまった」「入居前に繁殖していた」「外から侵入した」などです。
ここではそれぞれの原因について解説します。
前の家から持ち込んでしまった
新居に虫が出る原因の一つとして、今まで住んでいた家から虫を持ち込んでしまうことがあります。家具や洋服・布団、カーペット、段ボールなどにダニや衣服の虫食い原因であるカツオブシムシ・イガなどが付着して新居に持ち込んでしまうケースです。
対策として、普段からクローゼットや家具に防虫剤を設置し虫を発生させない、引越のダンボールは新品を使う(引越業者が準備してくれるケースが多い)などが挙げられます。
また寝具の天日干しや布団乾燥機の使用なども有効です。寝具に付着したダニの死がいも粘着テープや掃除機で除去するとよいでしょう。
引越先で荷物が片づかず、何週間もダンボールのまま放置するのも虫がわく原因です。
そのため引越後はできるだけ早く整理し掃除機をかけることがポイントです。
入居前に繁殖していた
貸物件の場合、入居前に虫が繁殖していることがあります。不動産会社は一般的に前の住民の退去後ハウスクリーニングをおこなっていますが、クリーニング後に虫が住み着いてしまうケースです。
ゴキブリなどは下水配管や屋根裏に生息している可能性があります。また畳が張り替えられていない場合、内部にダニが生息していることも考えられます。特に乳幼児や高齢者のご家族がおられる家庭は、入居前に畳の乾燥サービスを利用するとよいでしょう。
外から侵入した
虫が外から侵入してしまうケースもあります。住宅の外周は窓や玄関ドアなど密閉され隙間がないと思われがちです。しかしエアコンのダクト壁貫通部に隙間があると虫の侵入を許してしまいます。
また24時間換気の自然吸気口が居室の壁にある場合も防虫ネットが破れていると虫の侵入経路となります。戸建て住宅では、床下換気口の虫よけが割れている可能性も考えられます。
まずは新居の外回りを確認し、怪しいところは入居前にチェックしておきましょう。
新居の虫対策6選
ここからは虫対策方法について解説いたします。
入居前に対策できればよいですが、入居後に住みながら対策できることもあります。
1.入居時にくん煙剤を使用する
入居後にくん煙剤を使用する際には、食器や食べ物、植物、ペットなどを保護する必要があります。こうした作業には多くの手間がかかるため、入居前の何も置いていない状態でおこなうとよいでしょう。住宅に畳がある場合には畳を上げて立てかけ、畳裏や床下地にもくん煙剤が行き渡るようにしましょう。
使用後の換気はいきなり窓を全開せず、まずは換気扇を通しておこなうと排気ダクト内の虫にも効果があります。また換気をおこなったあとは引越まで、外部から虫が入らないよう窓は閉めておいたほうがよいでしょう。
2.エアコンに虫対策を施す
エアコンは室内機と室外機をダクトでつなぎ、冷媒が通っているためダクト内で虫が行き来することはありません。
エアコンの虫対策が必要な箇所は、貫通部の隙間と室内機のフィルターです。
一般的に貫通部は専用のパネルや粘土などで隙間を塞いでいますが、年数が経つとひび割れ・収縮などで隙間が生じている場合があります。そのため入居前に不動産会社に確認し、異常がある場合には直してもらうと安心です。
また室内機のフィルターが汚れていたり詰まっているとカビやダニの発生原因となります。そのためフィルター掃除やエアコンクリーニングをおこなうとよいでしょう。
3.湿気対策を施す
人が住んでいない場合、湿気は発生しづらいため、湿気対策は入居後のポイントとなります。
日当たりの悪い1階や押入れ(クローゼット)、風呂場などはダニの好む湿気が多いため換気が必要です。24時間換気システムは窓を開けなくても外の空気を取り入れ、一般的に2時間で部屋の空気が1回入れ替わる仕組みですが、普段から家全体の換気をして空気が滞らないようにしましょう。
下駄箱や押入れ(クローゼット)、食器棚などには除湿剤を設置するのも効果的です。また防虫剤も同時に設置することで、衣服の虫食い原因となるカツオブシムシ・イガの発生を予防できます。
4.侵入経路を断つ
エアコンダクトの隙間や床下換気口防虫ネットとは別に、ゴキブリなどの侵入経路として下水配管があります。
排水口の場所として洗面台・洗濯機・浴室・キッチンなどがあります。排水溝自体を塞ぐことは不可能なため、排水口付近に駆除剤を設置するとよいでしょう。駆除剤を設置することで夜間に活動するゴキブリなどの侵入を絶つことができます。
駆除剤は粘着シートで捕獲するタイプと、駆除効果のあるエサを使ってゴキブリが集団生活する巣に戻った際にほかのゴキブリにも効果を発揮するタイプがあります。
者は後述の駆除剤を設置していますが、そのおかげかここ数年自宅内でゴキブリを見かけることはなくなりました。
5.虫よけを設置する
ダニのほかに、人に被害を与える虫で身近なものとして蚊が挙げられます。住宅には網戸がありますが、隙間から入ってくることもあるので網戸用の防虫スプレーや虫よけアイテムを利用しましょう。
こうした蚊・ダニ・ゴキブリの死がいなどはクモの餌となります。クモの駆除方法としては、餌となる虫を寄せつけないこと、クモ専用の殺虫剤を使用することなどが挙げられます。
またシロアリは建物に対して有害な虫です。
シロアリは木造住宅の柱や土台を食べ、住宅の構造が弱くなる原因となります。シロアリ駆除は専門業者がいますが、施工価格が適正か、数社に見積もりを出すなどして必要以上の費用を払わないようすることも大切です。
6.ゴミを早めに捨てる
庭ゴミ(生ゴミ)の放置はあらゆる虫を寄せつける原因となります。
腐った臭いに最初にやって来るのがハエ・コバエです。またキッチンのシンクなどに生ゴミを溜めてしまうとゴキブリがやってきます。
家庭ごみは各自治体で指定されたビニール袋に入れ、収集日が来たら早く捨てることが大切です。最近はネットショッピングで宅配サービスが主流になりましたが、ダンボールを溜めてしまうと虫がわく原因となるため早めに処分しましょう。
よく出る虫別の対策を紹介
ここでは特によく出る虫への対策をそれぞれご紹介いたします。
ゴキブリ
効果的に害虫対策をおこなうためには、少し気味悪いかもしれませんが、ゴキブリを家の中で見つけて大騒ぎになる前に、種類と生態を知って対策しましょう。
日本に生息するゴキブリで代表的な種類として以下がいます。
・チャバネゴキブリ(12~15mm)
寒さに弱く暖房の整った環境を好み、夜行性なので日中は暗いところに潜んでいます。
・クロゴキブリ(27~33mm)
住宅に寄生する代表格で、成虫のサイズも大きいゴキブリです。
キッチンや段ボール、新聞・雑誌の隙間、観葉植物の土の中など湿気が多く、暖かい場所に卵を産む傾向があります。
前述のように侵入経路を絶つことは難しいため、駆除剤の設置と殺虫スプレーを併用して対策しましょう。
ダニ
ここでは身近で人に被害を与える虫の代表格であるダニの「種類」と「生態」から対策を解説いたします。
・ヒョウヒダニ(チリダニ)
カーペットや寝具、ソファーなどに生息し、人を刺すことはありませんが呼吸で吸い込むことによりアレルギーの原因となります。
・ツメダニ
カーペットや畳などに生息し、吸血しませんが夜間に人が寝ている間に刺すことがあり、刺されると赤く腫れて痒みが起こります。
ダニの対策
フローリング床・カーペット・畳を掃除機で吸引し、布団を干したり乾燥機で湿気を除去することで、ダニの死がいの除去が可能です。
またダニよけシートやダニ取りシートを寝具やソファー・カーペットの下に挟みこむのも効果的です。ダニよけシートの使用により筆者もダニに刺されることはなくなりました。
ペットと同居されていたり、乳幼児がいるご家庭ではダニよけシートがおすすめです。
一方、室内で発生するダニだけでなく、屋外で発生し室内に入り込むダニとしてタカラダニがいます。赤い身体で小さく、駐車場や敷地境界のブロック塀などに5月から7月ごろ発生します。人を刺したりせず被害はないものの、ベランダの掃き出し窓などから室内に侵入することがあり、潰すと赤い液体が付着するため注意が必要です(潰した液体でアレルギーになる人もいます)。タカラダニは自然発生するため、予防というより屋外で見つけたら散水して洗い流すのが早いです。
トコジラミ
上記で解説したダニはアレルギーを引き起こす原因として厄介ですが、トコジラミは人を吸血し夜も眠れないほどのかゆみを起こすため対策が重要です。
ツメダニ同様にベッド付近などに生息し、夜間活動して人が寝ている間に吸血します。トコジラミが厄介な点は一般的な殺虫剤やくん煙剤では駆除できないことです。
色が褐色でダニより大きく(5mm~8mm)目視できるため、家の中で見つけた際には掃除機で吸い取るのが基本的な対策です。ただし増殖した状態で見つけた場合にはお住いの地域の保健所へご相談ください。
まとめ
自然のある環境が少なくなり昆虫や虫と触れ合う機会が減りましたが、住宅においては害虫の発生が絶えません。特に乳幼児や高齢者、ペットと同居されているご家庭では「安全に暮らすこと」が第一なので、アレルギー発症も含めて害虫対策は必須といえます。
高層階なら虫が出ないと思われがちですが、人と同じくエレベーターで上がってきてしまうため注意が必要です。また最近では日本に居ない外来種が航空機で入国してしまうケースもあるそうです。
今回の記事がこれから新居へ引っ越しされる方、新居を探される方のご参考になれば幸いです。
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●執筆者紹介
斎藤 進一
一級建築士・福祉住環境コーディネーター 大手ゼネコンで施工管理を経験し、ハウスメーカー系工務店で設計・施工を経験。高齢者・障害者のバリアフリー住宅の専門家が当時居なかったことから2004年に「やすらぎ介護福祉設計」を創業する。