【助産師執筆】妊娠初期に夫が気をつけるべきことまとめ

妊娠初期は今まで続けてきた生活を見つめ直す必要がある時期です。特に仕事や家事、食事内容などについては妊婦さんだけでなく、ご夫婦で話し合うことが大切です。
妊娠中はつわりなどさまざまな症状が現れます。母子共に健康な状態で出産を迎え、産後に育児をスタートするためには、妊娠初期の夫婦関係が重要です。
「うちは大丈夫!」と思い込みすぎず、気をつけるべき点を確認しておきましょう。

妊娠初期はホルモンの急激な変化が起こることによって胎盤がつくられ、胎児の成長が促されます。このホルモンの作用により、母体へ身体的・精神的な影響が大きく出ます。つわりや疲れやすさ・眠気が現れ、今までと同じ生活が難しくなります。

そのため、身近な存在である夫の理解とサポートが不可欠です。感情の起伏や体調の不安定さに気づき、共感を示すことで妊婦さんの安心感が増します。また、夫婦の絆を深め産後の育児をスムーズにはじめるためには、妊婦さんの日常の負担を減らし、コミュニケーションを十分におこなうことが大切なポイントになります。

夫が知っておくべき妊娠初期のこと

妊娠初期は周りに妊娠を知らせていない方も多く、夫のサポートが特に重要となる時期だといえます。ここでは、妊娠初期に夫が知っておくべきことをお伝えします。

妊娠初期の身体のこと

眠気プロゲステロンの増加
食欲の変化hCGやプロテスゲロンの増加
つわりhCGの増加
ニオイに敏感になるhCGやプロテスゲロンの増加
めまいプロゲステロンの増加
熱っぽいhCGやプロテスゲロンの増加
疲労感プロゲステロンの増加
胸の張りや痛みプロゲステロンやエストロゲンの増加

妊娠初期には眠気、食欲の変化、つわり、においに敏感、めまい、熱っぽい、疲労感、胸の張りなどが現れることがあります。どれも個人差がありますので、すべての妊婦さんに当てはまるわけではありません。

どの症状に関しても「妊娠中であれば起こる、仕方のないもの」と考えてしまうかもしれませんが、中には対処方法や薬を使用することで症状が緩和されるものもあります。気になる症状がある場合には医師と相談することが大切です。

妊娠初期の気持ちのこと

妊娠が判明したとき女性は、一般的に「アンビバレンスな感情を抱く」といわれています。アンビバレンスとは、ある対象に対してまったく反対の二つの思考、感情、態度などが存在することを言います。
実際、「妊娠は喜ばしく、嬉しいけれど、一方でこの先元気に赤ちゃんが育つのか、自身にどんな変化が起きるのか」など、漠然とした不安を抱く人がほとんどです。
また、ホルモンの影響もあり感情の起伏が激しくなったり、出産に対して強い不安を感じる方もいます。

このような様子の妻に対して、夫はどのように接すればよいのでしょうか。
夫として、前向きに考えられるようなアドバイスをしたり、叱咤激励をしたくなることもあるかもしれません。しかし、まずはその気持ちを抑え、奥様の気持ちに寄り添っていきましょう。

妊婦さんがこれらの複雑な感情を持つことは、決して悪いことではありません。またほとんどの方は、これらの不安について解決策を求めているわけではありません。
ご主人は、まずは奥様の喜びや不安について、共感的な姿勢で話を聞いてあげましょう。

妊娠初期に気をつけるべきポイント

妊娠初期には、産後の生活を見据えた上での生活の改善をしていくことがポイントとなります。この時期に気をつけるべきことの多くは、妊娠初期だけではなく、出産後の子どもができてからの生活のなかでも、さらに健康的に年齢を重ねるためにも重要となることがほとんどです。
そういった長期的な視点も持ちながら、妊娠をきっかけにご夫婦の生活を見直してみるとよいでしょう。

睡眠や休息が取れるようにする

妊娠初期には、眠気や疲労感が強くなる方も多くいます。また、つわりのある方も多く、なかなか今までと同じようなスケジュールで物事を進めることが難しくなります。
人によっては自宅安静が必要となり、仕事をされている方も休職が必要となることがあるかもしれません。

この時期には今まで通りに動けないことに対して罪悪感を感じる方も多くなります。
そのため妊婦さんは睡眠や休息をとり、お腹の中で赤ちゃんを育てることが今もっとも重要な仕事であることを伝え、それを誇りに思えるようにしっかりとサポートしましょう。
夫は妻にただ休息や睡眠を促すだけではなく、体調に応じて必要最低限の家事や仕事をおこなえるよう家事を分担するなどして、2人で規則正しい生活リズムを整えていきましょう。

食事つくりの負担を減らす

つわりには以下のような種類があります。

匂いづわり:匂いによって吐き気が起きやすくなるもの
食べづわり:空腹時に吐き気が起きやすくなるもの
よだれづわり:唾液の分泌が過剰になるもの

いずれの場合にも、食事づくりは負担が大きくなるため、妊婦さんが食事づくりを担当している場合は夫が食事をつくる、もしくは惣菜の利用やミールキットの利用も考えましょう。
出産後1カ月ほどは特に休息が必要となります。妊娠初期のうちから、妊婦さんが食事をつくれないときがあっても困らない状況をつくれるようにしましょう。

また、妊婦さんの食事を夫が準備する際にも、妊娠初期は「栄養バランスを強く意識する」というよりも、「好みにあわせて食べられるものを食べたいときに、少しづつ食べられるように準備する」といった意識でサポートをおこないましょう。

妻の妊娠による変化に寄り添う

妊娠中の身体的・精神的変化は夫が体感することができません。
そのため、知ろうと思うことが非常に重要です。
たとえば、「つわりは一般的にはどのぐらいでおさまることが多いのか? 」「どのような食事だととりやすいのか? 」「つわりを起こりにくくする、軽くする方法はないか? 」など、積極的に知ろうとしてもらえることは、妊婦さんにとって非常に心強いことです。

そして、妊婦さんの体調や心の変化に関心を持ち続け、できるだけ共感的な態度で接してあげてください。
とはいえ、本やネットの情報からだけでは本当に妊婦さんが望んでいることが分からないことも多いです。そのため体調がよさそうなときに、直接どのようなことをしてほしいか聞けるとよいと思います。

胎児・赤ちゃんへの関心を表出する

まだ目に見えない赤ちゃんに対して、なかなか男性としては実感がわきづらい時期かと思います。本やネットなどから大きさや発達の具合を調べるなど、今の胎児の様子に関心を持つようにしましょう。
健診施設の許可が得られるのであれば、妊婦健診に同行するのもよい方法です。またもし施設都合や仕事で健診につき添えない場合でも、胎児の様子や、次の受診がいつなのかなどを共有してもらい、出産までのプロセスを一緒に感じられるように努めることも大切です。

また出産後のことについても一緒に考えていきましょう。妊娠出産準備用品や赤ちゃんの命名、胎児ネームでも構いません。赤ちゃんを迎えることを一緒に心待ちにしていることを、妊婦さんが理解できるようにしましょう。

妊娠初期に夫にできること

ここまで説明した妊娠による変化や気をつけるべき点を踏まえた上で、次により具体的に夫にどのようなことができるか考えていきましょう。また、これらについてはこっそり頑張るのではなく、必ず妊婦さんと共有しながら取り組むことをおすすめします。そうすることで、お互いに妊娠による変化を共に乗り越えようとしている自覚が芽生え、より強い絆につながります。

お祝い金の管理

妊娠や出産のお祝い金の管理は、きっちりおこなう必要があります。後述する内祝いの必要性もあるので、いつ、どなたから、いくら頂戴したのかを必ず明確に記録しておく必要があります。

また、このお祝い金をどのように使用するのか、あるいは貯蓄するのか、もし使用するのであれば何に使用するのか、その金額はどの程度の予算を考えているのかについてもご夫婦でのすり合わせが必要です。また、もしこのお祝い金を貯蓄しようと考えているのであれば、具体的に将来何のための費用に充てるのか、どこの口座に貯蓄するのかなども考える必要があります。

内祝いの手配

内祝いは、一般的にいただいた金額の半額程度の予算で、出産したことの報告と感謝の気持ちを表すために贈り物をおこなうことを指します。
受け取る側の好みに合わせながら、ベビーグッズやお菓子などを選ぶのが一般的ですが、お相手に喜んでいただけるように考え出すと、かなりの時間がかかります。またお返しする方のイメージがないと選びにくいことも多いです。

妊婦さんと相談しながら、ご家族・ご親族様をはじめ、職場の方などへの内祝いに関しても事前に目星をつけておくといいでしょう。
また、内祝いをどのように渡すのかも同時に確認しておきましょう。直接手渡しでお渡しするのか、ご自宅に送付するのかなど確認が必要です。送付の場合は送付先の住所が必要となりますので、そちらも確認しておきましょう。

家事分担の見直し

先ほども食事づくりの負担軽減についてお話ししましたが、それ以外の家事についても分担の見直しが必要となります。
妊娠初期だけでなく、産後はどうしても育児にかかる時間が生じるため、今まで通りの家事分担では妻側への負担が大きくなります。
とはいえ、夫側に産後新たに家事をするための時間が生まれるのかというと、もちろんそうではありません。そのため今までと同じレベルの家事が必要なのか、必要なのであればどうやってそのレベルを維持するのか(時間管理で家事時間を捻出するのか、外部サービスや便利家電を使用するのかなど)を見直してみましょう。

言葉遣いの配慮

こちらも普段から必要な配慮ではありますが、特に妊娠中・産後はホルモンバランスの変化により言葉の小さな端々にイライラしてしまったり、傷ついてしまう妊婦さんも少なくありません。

また妊婦さん自身も、特にはじめての妊娠の場合であれば、特にわからないことだらけで不安も強く、常に緊張状態にあります。妊娠中のさまざまな症状についてほかの人と比べたり、マシ・軽いといった評価をするような発言は避けたほうがいいでしょう。
また、体型の変化についても敏感な方が多いです。吐きづわりで痩せ過ぎている、食べづわりで太り過ぎている、といった見た目の変化に関することも積極的には伝えなくてよいかと思います。

禁煙・禁酒

妊娠中の夫が禁煙することは、母体だけでなく赤ちゃんの健康にも重要です。妊娠中の喫煙は流産や早産のリスクを高めるとされています。また、胎児の成長や発育にも悪影響を与え低出生体重児や小児期の健康問題のリスクを増加させる要因とされています。

これらの影響は妊婦さん自身が喫煙しなくても、夫が喫煙している場合、妊娠中の妻や胎児へ副流煙や、衣類についたニコチンが胎児に悪影響を与える可能性は非常に高いことが示されています。そしてもちろん、ご自身の健康のためにも、夫の禁煙が重要です。

た、妊娠中の飲酒は、胎児の重篤な奇形や障害につながる可能性もあります。タバコと異なり、二次被害は起こりませんが、お酒の好きな妊婦さんにとっては目の前での夫の飲酒は、自分だけが我慢しなければならないというストレスにつながるかもしれません。
また、妊娠中は何が起きるか分かりませんので、できるだけ夫が非常時に運転できるよう過ごす必要があります。

感染症対策

妊娠中は、免疫系等の変化により感染症が重症化しやすかったり、疾患によっては胎児に重篤な影響をもたらすものがあります。
ご夫婦ともにしっかりと手洗いうがいをおこない、人混みなどにはあまり行かないようにしましょう。

また必要に応じて予防接種を受けることも重要です。夫や妊婦さんの抗体、季節性の感染症の流行にあわせて必要なものを受けるようにしましょう。
感染症の中には食事から感染するものも含まれます。生肉・生魚・生卵などは避け、十分に加熱調理された食事を心がけましょう。特に外食の場面では知らずに口にしてしまうこともあるかもしれません。お店の方に妻が妊娠中である旨を伝えられれば、安心かもしれませんね。

妊婦健診の送迎、付き添い

妊娠初期は前述の通り、匂いなどがつらく、公共交通機関の使用が難しい場合があります。また眠気や疲労感が強いためできるだけ車の運転は避けていただきたいです。
そのため、妊婦健診をおこなっている施設までは送迎があるほうが安心だといえます。

またもちろん、健診施設に制限がなければご一緒に受診することができれば、医師の話の共有がスムーズにでき、何より夫がいることで安心感が得られます。ぜひ積極的にご同行いただき、夫としても不安なことや心配なことがあれば医師に確認していかれるとよいかと思います。

妊娠・出産についての情報収集

男性の場合、妊娠・出産についての情報は自身で積極的に収集しない限り、自然に耳にする機会は非常に少ないのではないでしょうか。最近は夫向けの妊娠・出産・育児雑誌も多く見受けられるようになりましたし、市町村や民間でも夫向けの両親教室が開催されていることも多くあります。そういった場所でたくさん情報収集しておくとよいと思います。

妊婦さん目線で必要だと考える情報と、夫目線で必要だと考える情報は異なるものも多くあります。その違いも楽しみながら、ご夫婦で共有しながら妊娠生活を楽しんでいってもらいたいです。

そのほかできること

そのほかに大切なこととしては、日々の会話やコミュニケーションの時間です。
ご主人のなかには、「妊娠という、自身が体験できないことを妻が経験している」「あまり元気ではない」といった理由から、なかなかうまくコミュニケーションがとれない、話しづらいと感じる方も多いようです。
妊娠初期であっても24時間体調が悪いというわけではありません。少しでも症状が軽いタイミングで妻に声をかけたり、やってほしいことを確認したり、二人の子どもをお腹の中で守り育ててくれていることに感謝を伝えてあげてください。もちろん、これも妊娠初期に限ったことではなく、妊娠中・産後もぜひ続けていってほしい習慣の一つです。

まとめ

妊娠初期を含め、妊娠中に気をつけるべき家事や生活習慣の見つめ直しは、これから先の夫婦関係や子育て、ご夫婦の健康において非常に重要となります。
「今だけのために」ではなくこれから先長い人生でどのような両親に、どのような家族になっていきたいかを見据え、妊娠初期からご夫婦で良好な関係を作り上げながら、繊細な時期を乗り越えていきましょう。

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執筆者紹介

山口百合乃(助産師)

地域周産期センター、総合病院、個人クリニックと大小さまざまな病院で約2000件の分娩に立ち会い、約400件の分娩介助に携わる。現在はゆりの助産院を開業し、オンラインと訪問型の助産院の院長として活動中。3児の母。

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