妊娠・出産を現実のものとして考えるようになると、さまざまな不安や疑問が出てくるものです。さしあたり心配になるのが、出産関連の費用ではないでしょうか。医療の発達した現代にあっても、出産はいまだに“命がけ”でリスクの高いもの。入院が長引いたり、想定以上の医療費が発生したりと、出産には思わぬ費用が発生する可能性があります。こうした出費に備えるのが保険です。日本は公的な医療保険が充実していますが、それではカバーしきれないリスクもあります。この記事では妊娠前から検討したい保険加入について解説します。
目次
妊娠・出産における保険のメリット
妊娠糖尿病、切迫早産による緊急入院、産後うつなど、妊娠・出産には、さまざまなリスクが伴います。たとえば近年では年々帝王切開が増加しています。厚生労働省の調査によれば、令和2年の全分娩に占める帝王切開の割合は27.4%でした。4件に1件以上が帝王切開となっており、自然分娩ではない形で出産するケースは決して珍しいことではないことがわかります。
できるだけ安全かつ低リスクで妊娠・出産・産後を迎えようとだれもが思うものですが、こうした思わぬ事態に備えるのが保険です。妊娠してから出産まではもちろん、出産後もさまざまな費用がかかるもの。保険加入は妊娠・出産だけでなく、そのほかの病気や健康問題への備えにもなります。
妊娠における健康リスク

妊娠・出産にはさまざまな健康リスクがあります。たとえば妊娠に伴ってつわりが始まると、日常生活が難しくなる方も珍しくありません。においに敏感になったり、吐き気が強く出るような場合、仕事を続けるのが難しくなる方もいらっしゃいます。
つわり、妊娠高血圧症候群、貧血などについて治療が必要になってくるケースもあります。
また妊娠糖尿病、切迫早産・流産、子宮内成長不良、うつなどを含む、妊娠中の感染症や合併症などもリスクの1つとして挙げられます。
これらの症状は治療が必要と診断された場合には、公的な健康保険が適用されます。不調や不安なことがあれば自己判断せず、妊娠中の定期健診などの際に、積極的に医師に相談して診断を受けましょう。
| 妊娠に伴う症状 | 健康保険の利用 |
| つわり、妊娠高血圧症候群、貧血 | 治療が必要な場合には利用が可能な場合がある |
| 妊娠糖尿病、切迫早産・流産、子宮内成長不良、うつ | 妊娠中のリスクの一つとして判断されれば利用が可能な場合がある |
分娩において必要な医療費

分娩にかかる医療費は、地域や医療機関の違いによって異なりますが、主な費用としては妊娠時の定期的な妊婦健診の費用と、出産時の分娩・入院費用が挙げられます。
妊婦健診の費用は医療機関や検査内容によるものの、ほとんどの自治体で助成制度が利用でき、実際の負担額は軽くなっています。
出産時の費用については、自然分娩の場合は病気ではないため健康保険が適用されず、全額自己負担となります。自治体から出産一時金が支払われるためトータルで見ると自己負担額はそこまで高くなりませんが、出産一時金が後から給付される場合にはいったんまとまった金額を用意しておかなければなりません。
なお、母子手帳の発行を受けた自治体と、出産する自治体が里帰り出産などで異なる場合でも、お住まいの自治体へ申し出ることで後からお金を返金してもらえるケースもあります。自治体の母子保健係や保険センターに相談に行くと、自治体ならではの情報も提供してもらえますので、早めに相談に行くことをおすすめします。
帝王切開の場合
帝王切開は医師が必要と判断した場合におこなわれる医療行為のため、健康保険が適用されます。
帝王切開の手術費用は基本的にはどこの病院でも同じ金額で、予定帝王切開(事前に母体や胎児の状況により医師の判断によりおこなうもの)は201,400円、緊急帝王切開(分娩中に何らかのトラブルがあり母体や胎児を守るためにおこなうもの)は222,000円(2022年実績)となりこのうちの3割にあたる約6万円強の金額が自己負担となります。さらに早産などの出産の場合、約2万円が別途加算されます。
ただし帝王切開だからといって、すべての出産費用に健康保険が適用されるわけではありません。一般の入院と同じく、個室や少人数部屋を利用する場合は差額ベッド代が発生するほか、食事代やパジャマ、タオルなどには健康保険は適用されません。帝王切開の場合は入院期間が通常の出産よりも長くなるため、その分、入院費用も多く必要になります。
自然分娩の場合
自然分娩の費用は医療機関や部屋の種類、入院日数などによって異なりますが、約30万円から80万円程度といったばらつきがあります。2021年度の全施設平均では、正常分娩の場合は47万3,315円です。費用の主な内訳は、入院料、分娩料、新生児管理保育料、処置・手当料、室料差額、産科医療保障制度の掛け金などです。
無痛分娩の場合
無痛分娩(無通分娩)にかかる費用は、通常の分娩と比べて出産時の痛みを和らげる分娩方法のため、麻酔や陣痛促進剤などの医療行為がおこなわれる分、自然分娩に比べ約10万円から20万円高くなるのが普通です。一般的に以下の費用が含まれます。
・無痛分娩を実施するために使用される麻酔の費用
・診察料や手術料
・麻酔導入するための検査や処置にかかる費用
・麻酔後の患者のケアやモニタリングにかかる費用
このほかに通常の分娩にかかる費用が加算される場合があります。
妊娠・出産において利用できる保険とは
次に妊娠・出産において利用できる保険について確認します。
健康保険
繰り返しになりますが、妊娠・出産は病気やケガとは異なるため、公的な健康保険の適用外となります。ただし予期せぬ合併症や帝王切開、切迫早産といった特別な状況の場合は、健康保険が適用されます。
妊娠中に発症する妊娠高血圧症候群、つわり、貧血、妊娠糖尿病、子宮内成長不良などで治療が必要になった場合や、出産時に切迫早産、流産、帝王切開、陣痛促進剤の利用、吸引・鉗子分娩、妊娠中の感染症や合併症、産後うつなどが起きた場合にも健康保険が利用できることがあります。
出産後はゆとりがなく、健康保険の適用について確認するのは難しいかもしれません。家族にあらかじめ頼んでおいて確認してもらったり、入院費の精算時に確認するとよいかもしれません。
民間医療保険
民間の生命保険会社や損害保険会社で扱う医療保険が適用されるのは、基本的には公的な健康保険が適用されるケースと同じです。帝王切開などがおこなわれた場合や、そのほか妊娠中に新たな病気が発見されたような場合は、給付金の対象となります。
そのとき、医療保険に女性疾病特約などが付帯されていると、より手厚い保障が受けられます。女性疾病特約は本来の病気やケガの保障に加え、妊娠中に異常が発見された場合に保障が大きくなります。
ただこちらも、自然分娩の場合には病気やケガとは判断されないため、給付金はありません。
妊娠前に保険に入っておいたほうがいい理由

妊娠前に医療保険を契約しておくとよい理由の1つは、妊娠判明後に発生する可能性のあるさまざまなリスクをすべてカバーできることです。
妊娠期間中の健診で、身体に異常が見つかった場合はもちろん、ほかの病気が発見をされることもあります。公的な健康保険では3割負担となるものの、民間の医療保険に契約しておけば、健康保険でカバーできない入院費などもフォローできます。また、万が一異常分娩となり、自己負担額が増えるような場合にも備えることもできます。
妊娠前の医療保険の契約がよいもう1つの理由は、妊娠中に新たに契約するより健康リスクが少ない分、保険商品が多く、保険料も低く抑えることができるなど、メリットが大きいからです。
妊娠中に加入できる保険商品もありますが、出産関連の疾病や子宮部位の疾病に対しては保障対象外になることが多いようです。一般に、対象外となることの多い疾病は以下のようなものです。
・子宮外妊娠
・帝王切開
・早産、流産
・妊娠中毒症
・妊娠悪阻(ひどいつわり)
保険適用外となる疾病は加入者の健康状態や保険商品によって異なりますので、詳細は個別にご確認ください。
また、保険商品によって加入は「妊娠27週目まで」のような制限を設けていることもあります。その点、妊娠前であれば、さまざまな加入条件を気にすることなく選択肢が格段に広がります。
妊娠中に医療保険には入れる?
妊娠27週目まではほとんどの保険会社で医療保険に加入できるようです。ただし、妊娠や出産に関係する部位(子宮や卵巣、卵管など)が保障対象外になるケースがほとんどで、切迫流産や帝王切開なども保障から外れます。また仕事の内容やすでに加入している保険の契約状況によっても保障内容が制限される場合があります。
肝心なときに保障されなかったりしては意味がありませんので、妊娠中に加入する場合には、適用条件をしっかり確認しておきましょう。
妊娠・出産の費用に利用できる制度

ここでは妊娠・出産の費用を補填してくれる制度をご紹介します。制度を上手に活用して妊娠・出産にかかわる経済的負担を減らしていきましょう。
出産育児一時金
出産育児一時金は、出産にかかわる費用に充てることができるよう、公的医療保険の加入者または家族(被扶養者の場合は家族出産育児一時金)が、妊娠4カ月(85日)以上の方が出産(早産、死産、流産、人工中絶を含む)した場合、1児につき一律50万円または48.8万円の給付をおこなう制度です。
日本では国民皆保険制度のもと、だれもが公的医療保険に加入していることから、出産予定の妊婦さんであれば受給可能な給付金となっています。
また直接支払制度を使うことで、自治体からお金を直接医療機関へ支払ってもらえるケースもあります。この制度が使えれば、自然分娩でもまとまったお金を用意しておく必要がなくなります。
高額療養費制度
高額療養費制度は毎月1日から末日までに同じクリニックや薬局、ドラッグストア、総合病院などで支払った金額が1カ月間の上限額を超えた場合に超過額を支給する制度です(入院時の食費負担や差額ベッド代などは含みません)。
その月に支払う医療費が高額になることが分かっている場合には、各健康保険にて「限度額適用認定証」が発行してもらえます。限度額適用認定証を病院へ提出することで、実際の窓口負担を少額にすることができます。
医療費控除
医療費控除とは所得税および個人住民税において、自分自身や家族のために支払った場合に適用となる所得控除であり、200万円以上の所得の方は1年間の支払った医療費などの総支払額から10万円を控除した残額が控除金額となります(200万円未満の場合は総所得金額の5%)。
ただしあくまで所得金額からの控除であり、税金からの控除ではないことに注意が必要です。
また従来の医療費控除と2017年から新設された特例であるセルフメディケーション税制(実際に薬局などで支払ったOTC医薬品が12,000円以上ある方で上限88,000円まで)との2種類があり、どちらか一方のみの利用ができます。一般的には通常の医療費控除のほうが金額を取れるものと思います。
妊娠前に保険に入るときの注意点
ここでは妊娠前に保険に入るときの注意点について確認します。
保障範囲
すでに加入している保険があるのなら、その保険の保障がどこまで及ぶのか確認しておきましょう。同じ保障があると無駄になってしまいます。
保険の責任開始日
加入する保険がいつから保障が始まるのか。責任開始日を確認しておきましょう。
妊娠中の加入の場合の制限
妊娠中に保険に加入するなら、保険に条件などの制限がつく可能性があります。
制限がついても加入する意味があるのか確認しましょう。またそのような条件がつかないうちに保険に加入することが大切です。
女性疾病特約
可能であれば加入する医療保険に女性疾病特約をつけておくこともおすすめします。特約をつけることができれば、女性特有の疾患に関しての保証が手厚くなります。
健康医療相談サービス
多くの保険会社では健康医療相談サービスが無料でついてきます。これは病気やケガはもちろん、妊娠時の不安にも相談にのってくれるサービスです。
24時間年中無休で医師や看護師、保健師などが相談に対応してくれます。またご自身が病院にかかっていても、セカンドオピニオンとして利用できるケースもあるので安心です。
まとめ
公的医療保険は私たちにとって大切なものですが、すべてのリスクをカバーすることはできません。民間の医療保険にも早めに契約しておくことで、妊娠以外のリスクにも備えることができます。
私たちが妊娠を知るのは少し時間が経過してから、身体に異変が生じたことがきっかけなのがほとんどです。そのときにはすでに妊娠は始まっているため、民間の医療保険の選択肢が狭まってしまいます。経済的にも精神的にも、保険を利用することでさまざまなリスクや不安を軽減することができます。将来の妊娠・出産を計画している方は、妊娠する前から、少しでも早く医療保険の検討をスタートしてみてください。
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