10カ月間の妊婦生活を送り、やっと出産したかと思えば授乳が始まります。
母乳は赤ちゃんにとって必要不可欠な栄養源であり、お母さんの食事の影響を受けやすいもの。食事や栄養素については、妊娠中も気をつけることが多いですが、授乳期も同様に意識する必要があります。
今回は、授乳期の栄養が重要な理由、必要な栄養素などについて解説します。
実際に食事をするときのポイントについてもご紹介していますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
授乳期の栄養は大事
授乳期とは赤ちゃんを産んでから、離乳するまでの期間のことを指します。
授乳は赤ちゃんに栄養素を与えるだけではなく、心身の健やかな成長・発達のためにも重要です。2005年度から2015年度で、母乳育児の割合は増加しており、母乳で育てたいと思った人の割合も9割を超えています。
また、乳幼児期に栄養が不足してしまうと、脳の発育や身体の成長・発育の遅れ、免疫機能の低下につながる恐れがあります。そのため、お母さんは妊娠中だけではなく、産後の授乳期も栄養に気をつける必要があるのです。
授乳で特に重要な栄養素

赤ちゃんの栄養源は、生後5~6カ月までほぼ100%ミルクに依存しています。そのため、授乳期のお母さんは、必要な栄養素をしっかり摂取する必要があります。
日本人の食事摂取基準(2020年版)には、授乳婦の食事摂取基準が掲載されています。
推定エネルギー必要量は、妊娠前と比べて余分に摂取すべきと考えられる量が記載されており、350kcalを追加で摂取しなければならないとされています。

ビタミンD
ビタミンDは脂溶性ビタミンの1つで、カルシウムとリンの吸収をサポートします。骨や歯の形成、成長を促す働きのある栄養素です。食品では主に魚介類やきくらげなどのきのこ類に豊富に含まれています。また、人間が紫外線を浴びることで体内でもビタミンDが作られます。
乳幼児ではビタミンDが不足すると、骨が弱くなる、くる病を起こすとされています。不足する要因としては、日にあたる機会が少ないことや、母乳栄養などが挙げられます。また、母乳中のビタミンDの濃度については、授乳する母親のビタミンDの栄養状態や季節などによって変動します。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、ビタミンDの摂取目安量が設定されています。これは、ビタミンD不足によって、くる病や低カルシウム血症になってしまった症例や、母乳中の分泌量を考慮したうえで算出された値となっています。
ビタミンK
ビタミンKは、脂溶性ビタミンの1つです。出血した際に血液を凝固させる働きのあるたんぱく質を作るのをサポートしたり、健康な骨を作ったりするのに欠かせない栄養素です。フィロキノンとメナキノン類の2種類があり、フィロキノンは緑色の葉野菜や海藻に、メナキノン類は納豆やチーズなどの発酵食品に多く含まれています。
ビタミンKは胎盤を通りにくく、さらに母乳中のビタミンK含有量は低いことが分かっています。さらに、乳児のビタミンK生産量は低いと考えられており、ビタミンKの欠乏に陥りやすいです。
生まれてから数日後に起こる新生児メレナや、約1カ月後に起こる突発性乳児ビタミンK欠乏症は、ビタミンKの不足によって起こることがわかっています。そのため病院などでは、生まれてからすぐにビタミンKの経口投与がおこなわれます。現時点で、授乳期のお母さんのビタミンKが、不足しやすいといった報告はありませんが、乳児への影響を考えて不足しないように気をつけるとよいでしょう。
カリウム
カリウムは、多量ミネラルの1つで、大人の体の中には体重1kgあたり約2g存在しています。細胞の浸透圧を維持したり、ナトリウムの排泄を促したり、心臓や筋肉の機能の調節をおこなう、生命維持に欠かせない栄養素です。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、乳児、授乳婦ともに目安量が設定されています。
目安量は、0〜5カ月の赤ちゃんが、1日で飲む母乳の量を0.78Lとし、母乳中のカリウム濃度から算出しています。
また、授乳婦については、平成28年国民健康・栄養調査の結果を参考に設定されています。
カルシウム
カルシウムは私たちの体にもっとも多く存在しているミネラルで、99%が骨や歯に、残りの1%は血液などに存在しています。骨や歯の主な成分となっているほか、神経情報の伝達や筋肉の収縮・弛緩の調節などの働きもあります。牛乳や乳製品、まるごと食べられる小魚や、青菜、大豆製品などに多く含まれています。
妊娠中は、カルシウムが母体から胎児に供給されるため、注意が必要ですが、授乳婦の場合、特に不足のリスクはないとされています。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では目安量が設定されていますが、これは母乳中のカルシウム濃度と母乳を飲む量から算出されており、基本的には母乳から必要なカルシウム量を摂取できるといわれています。
ただ、粉ミルクは母乳に近いとはいえ、吸収率がやや低いという報告があります。そのため、混合栄養や粉ミルクの場合はカルシウム不足に注意が必要です。
亜鉛
亜鉛は、ミネラルの1つで、血液や皮膚に多く存在しており、骨や筋肉、内臓などにも存在します。たんぱく質やDNAの合成に必要で、傷の修復や体の成長に必要不可欠な栄養素です。また、味覚を正常に保つ、免疫力を維持するといった働きがあります。
乳児の目安量は0~5カ月で1日あたり2mgとしており、これは海外の食事摂取基準と、日本人の母乳中の亜鉛濃度の代表値、母乳を飲む量などをもとに設定されています。
ヨウ素
ヨウ素はミネラルの1つで、体内にあるヨウ素のうち70~80%は甲状腺に存在しています。摂取したヨウ素のほとんどが吸収され、甲状腺から分泌されるホルモンの材料となり、基礎代謝を増やしたり、子どもの発育を促したりする働きがあります。
日本人は世界の中でもヨウ素の摂取量がかなり高いです。これは、ヨウ素は海藻類、特に昆布に多く含まれているためです。海藻や昆布などのヨウ素を多く含んでいる食品を摂取する頻度によって、ヨウ素の摂取量は大きく異なることがわかっていますが、平均で1日あたり1~3mgと推定されています。
授乳婦については、WHOの推奨摂取量と0~5カ月の赤ちゃんの目安量から付加量が定められています。
必要な母乳の量

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、生後0〜5カ月の乳児の哺乳量を1日あたり0.78Lとして、各栄養素の基準値を定めています。
離乳開始後は、6〜8カ月で1日あたり0.60L、9〜11カ月で1日あたり0.45Lとしており、栄養素によっては6〜11カ月を1日あたり0.53Lを用いて設定しています。
母乳は赤ちゃんにとって最適な成分組成となっているだけではなく、感染症の発症リスクを抑える働きや、産後の母体の回復が促進されるといったメリットもあります。
授乳の間隔や回数、量が安定するまでの時間は、生後6~8週間程度といわれています。しかし、個人差があるものなので焦る必要はありません。
また、母乳が十分に出ない場合、育児用ミルクを利用することもあります。いずれにしても授乳を通してスキンシップなどを心がけるようにしましょう。
授乳に必要な栄養を取るときのポイント
授乳している間のお母さんの食生活は、母子の健康状態だけでなく母乳の栄養にも影響します。
バランスを考える
「食事のバランスを考える」と聞くと、少し難しく思ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、飲酒をのぞいて、授乳期に食べてはいけない食品は特にありません。そのため、まずは主食・主菜・副菜の揃った食事を心がけるようにするとよいでしょう。
1日に「なにを」「どれだけ」食べたらよいかわからない方は、厚生労働省と農林水産省が出している「食事バランスガイド」を参考にしてみてください。
食事を調整するコツは焦らず時間をかけることです。無理なく続けられるペースで食事を改善していきましょう。
食事の摂り方におけるポイント
食事については、エネルギー量やたんぱく質、ビタミンやミネラルなどの必要な量が確保できるよう、しっかり食べることが大切です。
脂質は、食事からしか摂取できない必須脂肪酸であるn-3系脂肪酸を意識しましょう。n-3系脂肪酸は、魚に多く含まれています。母乳中の脂質の質は、お母さんの食事が反映されるため、極端に脂質を控えることはあまり好ましくありません。
また、母乳関連で注意したいトラブルの1つが乳腺炎です。ただし、乳腺炎になったからといって、食事や水分を制限したり過剰に摂取する必要はありません。
乳腺炎の発症予防を目的とした乳製品などの特定の食品の摂取制限はエビデンスが確認できていないため、推奨されていません。
まとめ
授乳期は、赤ちゃんのお世話に追われるため、十分に睡眠や休養がとれなかったりストレスが溜まってしまいがちです。そのようななかで、食事に気をつけることはかなりハードルが高いことかもしれません。
そのため、妊娠している間、もしくは妊娠前から意識しておくとよいです。また、家族に協力を頼んだり、公的なサービスを活用してもよいでしょう。お母さんと赤ちゃんの健やかな成長のために、今一度食事を見直してみてはいかがでしょうか。
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