【助産師執筆】初産でスピード出産になった理由とは?リスクやメリットも解説

妊娠中にさまざまな出産経験談を聞いて、お産ができるだけスムーズに、早く進んでほしいと考える方は多いと思います。初めての出産がスピード出産になる理由には、ママ側の理由や赤ちゃん側の理由、出産環境などさまざまです。この記事では、安全に初産でスピード出産を迎えるための準備や陣痛中の過ごし方、関連するリスクとその対処法について解説します。

スピード出産とは

スピード出産とは医学的な用語ではありませんが、一体どの程度の分娩時間で出産することを指すのでしょうか。

分娩時間の平均とは

初産婦(初めて出産する女性)の平均分娩所要時間は、一般的に12~18時間とされています。また、経産婦(過去に出産経験のある女性)の場合は、6~12時間と短くなる傾向があります。

経産婦の場合は、以前に出産を経験していることで身体が出産に慣れている部分もありますが、初産婦は子宮口の開大や分娩進行に時間がかかることが多く、分娩時間が長くなることが一般的です。もちろん、これはあくまでも平均ですので、ママや赤ちゃんの状態や出産時の状況により異なる場合もあります。

初産でのスピード出産とは

前述のとおり、分娩所要時間は諸条件によってさまざまですが、時間がかかりすぎることはママにとっても赤ちゃんにとってもリスクとなります。そのため、初産婦では30時間以上、経産婦では15時間以上の分娩所要時間となるケースを遷延分娩といい、病院などの機関でなんらかの医療的アプローチをおこなうことが多いです。

この記事では、スピード出産の定義を初産婦の平均分娩所要時間の半分である6~9時間以内とします。急速なお産の進行は、一見よいことのように思えますが、母体や赤ちゃんに予期せぬ負担をかけるリスクも伴います。たとえば、産道が急に広がることによって裂傷が生じたり、赤ちゃんの呼吸調整が間に合わないリスクも考えられます。

初産でのスピード出産が少ない理由とは

繰り返しになりますが、初産婦ではスピード出産になりにくいのが一般的です。なぜ初産婦のほうが時間がかかる傾向があるのか、その理由について説明しましょう。

初産婦の身体は出産を経験していないため

平均分娩所要時間からも分かるとおり、初産婦は経産婦と比べると出産に時間がかかる傾向があります。これは初産婦の身体が出産を経験していないことに由来します。

初産婦では子宮口の開大や産道の拡張に時間がかかることが多く、分娩全体の進行が遅れる傾向があります。一方経産婦の場合は、過去の出産経験によって体が分娩に対する準備ができており、子宮頚管や産道の柔軟性が高まっているため、分娩が進みやすいことが一般的です。

前期破水

前期破水とは、陣痛が始まる前に赤ちゃんや羊水を包んでいる膜が破れ、羊水が流出する現象です。通常、破水は分娩の進行とともに起こりますが、前期破水は陣痛が始まる前に発生するため、出産の進行に影響をおよぼすことがあります。
前期破水後、正期産であれば80%が24時間以内に自然に陣痛が発来するのですが、破水後は感染リスクが高まるため陣痛促進剤を使用して陣痛を誘発する場合も多くあります。
陣痛促進剤の使用は、分娩を進める助けになりますが、分娩所要時間が長くなる傾向があり、スピード出産とはなりにくくなります。

陣痛誘発

陣痛誘発がスピード出産になりにくい理由は、誘発された陣痛が自然陣痛とは異なる進行を辿ることが多いためです。
陣痛誘発にはオキシトシンなどの薬剤が使用されますが、これらは自然に分泌されるホルモンのリズムとは異なり、子宮収縮が強制的に引き起こされることになります。この人工的な収縮は、子宮口の開大や産道の拡張に時間がかかることがあり、自然陣痛と比べて分娩の進行が遅れることが多いです。もちろん、陣痛誘発が必要な場面もあるため、自然陣痛のほうがよいといったことではありません。

また、誘発された陣痛はママにあわせた陣痛ではなく人工的なもので機械的に強まっていくので、母体の負担が大きくなってしまうことがあります。赤ちゃんのストレスも増えるため、分娩管理が慎重におこなわれる必要があります。結果として、陣痛誘発はスピード出産になりにくく、むしろ分娩時間が長引くことが一般的です。

分娩週数

分娩週数によって一般的な分娩所要時間は異なることがあります。通常、正期産(37週〜42週未満)における分娩は最も標準的な経過となります。理由としては、胎児は十分に成長し出産の準備ができており、母体の準備も整っているためで分娩が比較的スムーズに進行するためです。

早産(37週未満)の場合、分娩所要時間の差は非常に大きいです。特に32週未満の早産では、分娩が速く進行することもあれば、遅れることもあります。胎児が小さく、母体の産道を通過しやすいため、分娩が速く進むことがあります。しかし、母体の準備ができていないため子宮口の開大が十分に進まないことも多く、これが分娩を遅らせる要因となることもあります。

そして過期産(42週以降)では、分娩所要時間が長くなることが多いです。胎児が大きくなりすぎている場合や羊水が減少している場合には特に分娩の進行が遅くなることがあります。また、母体が分娩の準備のピークを過ぎているため、陣痛が弱くなりやすい傾向にあります。

ストレスや不安

ストレスや不安は、心理的な緊張が体の生理的な反応に影響をおよぼすため、分娩を長引かせる原因となることがあります。ストレスを感じると、ストレスホルモンが分泌されます。これにより、血管が収縮し、子宮への血流が減少し、子宮の収縮が弱くなることがあります。さらに、ストレスや不安は痛みの感受性を高め、陣痛をより強く感じさせるため、分娩の進行が遅れることもあります。

また、精神的な緊張は筋肉の緊張を伴い、骨盤底筋や産道の柔軟性が低下します。これにより、赤ちゃんが産道を通過しにくくなり、分娩が長引くことがあります。それから、心理的な負担がかかると、母体のエネルギー消費量が増加し、疲労感が強まり、分娩の体力が持続しにくくなります。

★このため、スピード出産にはリラックスした環境やサポートが重要となります。パートナーや助産師のサポート、呼吸法やリラクゼーション法の活用、適切なケアは、分娩をスムーズに進めるために重要です。ストレスや不安の管理は、分娩の進行において非常に重要な役割を果たします。

妊婦の年齢

妊婦の年齢は分娩所要時間に影響を与える要因の1つです高齢妊婦(35歳以上)の場合、年齢が上がると、子宮の筋肉の弾力性や収縮力が低下する傾向があります。これにより、陣痛が弱くなることがあり、分娩が長引く原因となります。また高齢妊婦は、高血圧や糖尿病などの既往症を持つ方が多く、これらの健康問題が分娩所要時間に影響することがあります。

またどうしても年齢とともに全身の体力や持久力も低下するため、分娩の過程で疲労が蓄積しやすく、分娩が長引く可能性があります。
若年妊婦(20歳未満)では、骨盤や産道が十分に成熟していないことがあり、これが分娩の進行を遅らせる原因となることがあります。また出産に対する不安や恐怖心が強いことが多く、これがストレスとなり、分娩を長引かせることがあります。

妊婦と新生児の体重

妊婦の体重、そして新生児の体重も出産のスピードに影響します。肥満傾向の妊婦は、体脂肪の増加により子宮収縮が弱くなります。これにより、陣痛が十分に強くならず、分娩が長引くことがあります。また肥満による体力の低下や疲労感が強くなることで、分娩過程が遅くなる可能性があります。体力が持続しないため、分娩の進行が遅くなること場合もあります。そして肥満の妊婦では、大きな赤ちゃんが生まれることが多く、これが分娩を難しくし、所要時間を長くすることがあります。

反対に体重が不足している妊婦は、栄養状態が悪いことがあり、これが子宮収縮力に影響を与え、分娩が長引く原因となります。筋力も不足しているので、これが分娩の進行に影響を与えることがあります。胎児も小さくなる傾向があり、一見すると分娩がスムーズに進むように思えますが、母体の栄養不足によるほかの合併症が分娩を遅らせることがあります。スムーズな分娩を促進するためには、妊娠前の体重に応じた適正体重を維持することポイントとなります。

初産のスピード出産と関係のない要素

赤ちゃんの性別や血液型

過去の研究や実証データによると、赤ちゃんの性別は分娩所要時間に影響を与えないとされています。また同様に、赤ちゃんの血液型も分娩所要時間には影響ありません。分娩後のケアや母子の血液型不適合のリスクに影響を与えることはありますが、分娩所要時間とは無関係です。

スピード出産には子供へのリスクがある?

スピード出産、特に1〜2時間以内にご出産を迎えるような場合には、短時間で分娩が進行するので、出産直後には赤ちゃんに与える影響がいくつかあります。

まず赤ちゃんが産道を通過する時間が短いため、肺の圧迫が不十分となり、出生後に初めて呼吸を整えるのが難しくなることがあります。また、急速な出産により、赤ちゃんが低血糖状態になることがあります。これは、出産のストレスによりエネルギー消費が急激に増加するためです。

いずれの場合も、適切な医療対応とケアによってリスクは最小限に抑えることができます。また産科・小児科の先生・助産師や看護師の医療チームは、どのようなご出産の場面でも出生後の赤ちゃんの健康状態を注意深く監視し、必要なサポートを提供します。したがって、スピード出産が出産直後の赤ちゃんに与える影響はありますが、以降の成長に影響することはほとんどありません。
また、場合によっては進行が早く入院が間にあわないこと考えられます。どのような分娩進行でもスムーズに分娩施設に行けるよう、シミュレーションを予定日までに、ではなく妊娠後期のうちにしておくことが大切です。

スピード出産によるメリット

スピード出産のメリットとしては、短時間で分娩が進行するため、母体にとって体力の消耗が少ないことが挙げられます。長時間の陣痛や分娩の過程で体力の消耗が少ないため、産後の回復が早く、育児にスムーズに移行しやすいです。

また、分娩時間が短いことと感染リスクが低くなります。長時間の破水や遷延分娩は、母体や胎児に感染リスクを増大させることがありますが、スピード出産ではこのリスクが軽減されます。特に、前期破水が起こった場合、迅速な分娩は感染防止に有効です。

さらに、母体の心理的なストレスが軽減される点も大きなメリットです。長時間の陣痛は精神的にも負担が大きく、不安や緊張が続くことが多いですが、スピード出産ではその期間が短いため、心理的な負担が軽減されます。これにより、出産に対するポジティブな経験が得られやすいです。赤ちゃんにとっても、産道を短時間で通過するため、出産時のストレスが少なくなります。長時間の陣痛や分娩は胎児にもストレスを与えることがありますが、スピード出産ではこの負担が軽減されるため、出産直後の適応もスムーズになることが期待されます。

まとめ

スピード出産は、スムーズな進行で産後のママと赤ちゃんへの負担が少ない点で素晴らしいメリットがあります。しかし、分娩がゆっくり進行する場合にも、それには個々の理由があり、自然なプロセスの一部です。分娩所要時間だけに一喜一憂せず、ママと赤ちゃんの健康を第一に考えることが大切です。どれだけ時間が長くてもその先には必ず、待ちに待った我が子との対面が待っています。ポジティブな気持ちでお産に向かい、適切なサポートを受けながら、ママと赤ちゃんのペースを尊重してくださいね。

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執筆者紹介

山口百合乃

地域周産期センター、総合病院、個人クリニックと大小様々な病院で約2000件の分娩に立ち会い、約400件の分娩介助に携わる
現在はゆりの助産院を開業し、オンラインと訪問型の助産院の院長として活動中。「人とちがって当たり前!生きてりゃOK」のマインドで、正解を探しすぎず、楽しく妊娠・出産・育児ができるように地域や企業でママパパへ向けた活動をおこなっている。3児の母。

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